はじめに
研究のきっかけ:
Cookpad Malaysiaの立ち上げを担い、ムスリムの理解を深める必要性。
Research Question:
What makes Islam Islam?イスラームの根底にあるものはなにか?
<参考図書:イスラーム文化>
イスラームの中心としての『コーラン』
統一的文化構造体としてのイスラーム
『コーラン』+「ハディース」
コーラン:預言者ムハンマドが神の啓示を受け、その神の言葉が記された聖典
ハディース:預言者ムハンマドの言行録
<特徴1『コーラン』の解釈の展開>
イスラーム文化とは、『コーラン』をもとに、その解釈学的展開を経て出来上がった文化
コーランは神の言葉しかないため単層的だが、その解釈が広がる
<特徴2 人間生活の公私内外すべてを規定>
◎聖俗不分
ー>人間生活のあらゆる局面が根本的、第一義的に宗教によってカバーされる
※キリストの聖俗二元論
イエス「カエサルのものはカエサルへ、神のものは神へ」
<特徴3 共同体としての内的統一性>
すべてのイスラム教徒が神の啓示に基づいた1つの信仰共同体(”ウンマ”)に属しているんだ、という強烈な連帯意識
Eg. 年に一度のメッカ巡礼
イスラームの誕生と変遷
ユダヤ教、キリスト教による歪みをすべて元に戻し、「アブラハムの宗教」を純正な形で立て直そう。
<アッラーの特徴1 人格性>
神と人との関係は主人と奴隷
ー>絶対帰依
<アッラーの特徴2 唯一性>
”アッラーの他に~”
ー>偶像崇拝禁止
<アッラーの特徴3 全能性>
神によって瞬間ごとに世界が創造されていき、この神による瞬間的創造行為が世界の歴史を作っている
=時間的・空間的非連続
ー>イスラームのアトミズム(原子論的存在論)
<イスラーム法>
基本:宗教即法律
<契約>
全知全能の神と人間の主人奴隷関係
ー>神の倫理性
慈悲:神の行為は根本的に善
正義:人間の不義不正を激烈に罰する
<メッカ期とメディナ期>
基本:現世主義(来世的存在次元を至上価値とする)
メッカ期:恐れ。人間の自己否定
メディナ期:感謝。人間の自己肯定
<メッカ期ー>メディナ期;関係>
メッカ期:神ー人
メディナ期:神ー預言者ー人&信仰者はみな兄弟
ー>社会性”イスラーム共同体” … 宗教+社会機構
イスラーム共同体
☓血縁による連帯性
○信仰による連帯性
ー>普遍性・一般性・世界性=開放的
<イスラーム共同体の特徴>
1. 普遍性・一般性・世界性=開放的
2. 平等;契約関係に入った人は誰でも平等
3. 多層性:「啓典の民」の多層構造(イスラーム教徒が上に立ち、その下に複数の宗教共同体)
4. 聖俗不分:『コーラン』(神の意志)に従って、理想に近い現世的生活を構築
ー>政治=宗教としての”イスラーム法”
<イスラーム法>
イスラーム法=『コーラン』+『ハディース』;神の意志を命令と禁止で体系化したもの
人間を社会性において道徳的に規制する社会生活の規範体型
ー>法を意識することなしに日常生活を生きることが出来ない
Cf. ’法は空気’
内面への道
ウラマー:共同体的、立法的、シャリーア的
ウラファー:外に現れたものの奥にそれを裏から支える不可視の力(ハキーカ)
<シーア派>
外面化した神の意志を元の神の意志そのもの、啓示の原点に引き戻す。
→イマーム(シーア派的霊的最高権威者)の内的解釈
… <-> スーフィーは自分自身の内的解釈
シーア派にとっての人類史
1.12代目イマームお隠れ以前(過去)
2. 12代目イマームお隠れ状態(今);不可視の聖なる世界と可視の現世が平行
3. 12代目イマームがメシアとして再来(未来)
そこで、お隠れの時には、霊性的アンテナを備えた学識的指導者やシャーが支配。
<スーフィズム>
スフィー:修行によってワリー(ハキーカに直通した人)になる
修行;神との一体化=全存在界の絶対的原点そのものと一体になり、その一体性を主体的自体として自覚する事が最終目標。自己を掘り下げていき、我が内面の神と出会う。
悪とは汝が汝であること。最大の悪とは、汝が汝であることを汝が知らないこと。=自己否定
自我意識の虚無性がそのまま神の実在性の顕現に転生する。
What makes Islam Islam
シャリーアに依拠するスンニ派の共同体的イスラーム、イマームによって解釈、体現されるハキーカに基づくシーア派イスラーム、ハキーカそのものからの光のうちに成立するシーフィズム、この3つの相対立するエネルギーの間に醸し出される内的緊張を含んだダイナミックな多層的な文化。