はい、今日も本メモです。イタリアに関するエッセイを読んでみました。
イタリア人女性とその日本人の旦那さんが二人三脚で書いたエッセイで、日本とイタリアを比較しながら、「幸せに生きる」事を語っています。
実感値として私がイタリアにいた頃に感じた事とまさに同じようなことがより深く論理的に書かれているので、うなずく事ばかりでした。
以下、たまには思い出したいこと。
死んだ医者より生きたロバの方が良い
Meglio un asino vivo che un dottore morto.
とてもイタリアらしいですよね。勉強しすぎで疲れるよりも、いっぱい遊んで豊かに元気に過ごした方が良いよね、という意味だと思うのですが、思えば、私もまさにそうやって過ごしてきたな、と。
私の両親は、「子供は遊ぶことが勉強」と言っていました。
だから、小学校高学年になると、みんな周りの子が塾に行きだして、私も好奇心から「まま、あおいも塾に行きたい」と言ったのですが、「子供は遊びが勉強なんだから、塾なんか行ってもなんにもならない」と言われ、結局行かせてもらえませんでした。「勉強なんて大きくなってからいつでも出来る」というのがその理論でした。
よって、私は毎日どろんこになって外で遊び、ドッヂボールでは男の子をおさえていつもキャプテンでボールじゃんけんをし、リレーでも常にアンカーでした。
だけど、然るべき時に自分の気が向いたら勉強すれば良い話で、結局わたしも現役で東大に入れたのだから、小学校の頃から塾になんか行かなくても全然だいじょうぶなわけです。
(東大の受験が楽だったとは言ってません、私も1年間必死に勉強しましたから。)
一度も「勉強しなさい」と言わず、「子供のやりたいことにストップをかけない」というのが両親のポリシーであったのですが、そんな家庭でのびのびと育った事をふと思い出したのです。
マリアンジェラさんも同じようなことを言っていて、「親の希望を押し付けてしまうのは不幸のはじまり。誰のものでもない、あなたの人生だから、元気で楽しく」。そういう哲学で子育てをなさったようで、きっとうちのママとパパと仲良くなれるだろうな、と思いました。
徹底して個を伸ばす
イタリア語で個を表現する言葉に「identità」がありますが、これが口語化されているほど、イタリアでは一個人がそれぞれ自分の個としての特質を理解し、それを表現するそうです。
日本では「出る杭は打たれる」なんて言いますが、イタリアでは出る杭は称賛されて、出なかったらどうしたら出るかを考えるのだそう。
彼らが1人1人がめちゃくちゃユニークで(もっというと、都市だってそう。どの町も全然違うそれぞれの個性があって、どこ行ってもだいたい同じような日本と大違いです)、責任を持って自己を主張できるのは、純粋にかっこよいな、と思います。
だから、長所を伸ばす事を大事にするのですね。
本の中の印象的なエピソードで、旦那さんの関さんはピアニストなのですが、ツィルマンという世界的な音楽家の前で演奏した際、終わった後にアドバイスを求めに行ったといいます。
すると、「欠点はあなたの方がよく知っているのではないですか。1つだけ私が言える事は、あなたは自分の長所にはっきりと気づいていないことなのではありませんか?」と言ったそうです。
「人は人、自分は自分」、自分の長所をはっきり自覚することで生まれる核こそが本物であり、人を納得させるインパクトを生むわけです。
私達はよく欠点を直そうとします。しかし、もしかしたらそれよりも大事なのは、自分の強みを自覚することなのかもしれません。
これがCookpadでも言っている「Spike」だと思いますが、最近思うのは、Spikeは「自覚→伸ばせる環境での挑戦→Spikeが伸びる→自覚」というループだということです。
だから、私は自分のSpikeが伸ばせる環境に身を置きたいと思うし、そこでの挑戦でさら自分の強みや好きなことをどんどん見つけていきたいな、と思います。まだまだです。
休符
関さんがコンクールの直前にアルプスを前に、深く呼吸をついて考えたそうです。自分はどうして生きているのか。どういう音を出したいのか。
自分だけの純粋な時間は人生の豊かさを生み出す時間だといいます。
なるほど。私は最近この「休符」の大切さに気づきました。
それまで時間が空いているのはもったいないとばかりに予定を詰め込み、朝に夜にあちこち走り回っていたのですが、長く旅をしているとそうしなくても良いことに気づきます。
大してすることがないような町や島にいたり、あるいは見所が沢山でガイドブックに振り回されて本質を見失いかける事があるからです。
たとえガイドブックに載っているような全部を見れなくても、この一瞬を楽しむことが何より愛おしく豊かな事があるのです。
きれいな町並みを見下ろしながら、ぼーっと腰掛けている時間。
ビーチに寝そべって、エメラルドの海に波が行ったり来たりするのをただ眺めている時間。
夕日が川向うに沈んだ後、その名残を浮かべる空と川を見つめている時間。
こうした自分だけの純粋な時間が、自分だけの個性を作り上げていく。
何の安心感を得ようと思っているのか忙しくしすぎるのもほどほどにして、こうした自分だけの休符を作り出す自信、余裕、そしてその時間さえ楽しむ能力こそ、これから大事にしていきたいものです。