「クレジットアクセス→ケイパビリティ向上」Pathwayの整理と検証項目の洗い出し<卒論・本論2-2>

クレジットアクセスの拡大がケイパビリティ向上につながるかどうかを検証するにあたり、初めに、マイクロクレジット獲得からケイパビリティ向上までの道筋(pathway)を整理し、検証項目を洗い出す。その上で、これらの道筋が論理的・経験的に正しいのかを先行研究を参考にしながら検証する。

マイクロクレジット獲得からケイパビリティ向上までのPathwayの整理

まず、マイクロクレジットが最終的に人のケイパビリティにつながるまでの道筋を整理する。

先行研究からの参考

参考にするのはDuvendackら(2011)のOutcomeとEffectを分けたフレームワークである。左上のAccess to microfinance reduces credit constraintsから始まり、効果のチャネルとしてEffectを通し、最終的なOutcomesへの道筋を示している。

この図は、インパクトの過程をとらえ、それをOutcomesとEffectsで分けて考えている点において画期的だが、ケイパビリティ・アプローチの視点で考えられているわけではないため、Outcomesの設定が適切でないと思われる。

ケイパビリティ項目の設定

そこで、マイクロクレジットのケイパビリティ向上につながるインパクト検証に際して、まず、Outcomesとしてのケイパビリティ項目を適切に設定し、OutcomesとEffectsの分類をし直す。

ケイパビリティ項目としては、所得、教育、健康の3つの項目を捉える。根拠は、センのケイパビリティ・アプローチを参考に作られた国連開発計画(UNDP)の「人間開発指数(HDI: Human Development Index)」である。HDIは、健康(平均寿命)指数、教育指数、所得指数(GNI)の3つの項目で算出されている。
http://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/chousa/h28_kaihatsu/2_02_2_1.html

女性エンパワメントを含める研究が多いが、女性エンパワメントは教育や健康、時には所得の増加に対するチャネル(Effect)であり、結果(Outcome)ではないと考える。

新しいPathway図の提示

Duvendackら(2011)の図を参考にしつつ、OutcomesとEffectsを再分類し、不要な項目を省いて作成した図がこちらである。

左上のクレジットアクセスが、ビジネスの資金源となって利益を生み、これはおおむね所得の増加を意味する。所得の増加は2つの影響を与える。1つは直接的にその家庭の支出においてより健康や教育にお金がかけられるようになる。もう1つはマイクロクレジットの効果としての女性エンパワメントによる変化である。一般的に女性は男性よりも家族の健康や教育にお金を使う傾向があるため、女性の家庭内におけるエンパワメントが進むと、家庭の支出が変わり、子供の教育や家族の健康の水準が高まる。また、より直接的にOutcomesであるケイパビリティ項目につながるようなローン、具体的には健康ローン(例えば急な医療費による出費をまかなうためのローン)と教育ローン(学生ローン)といったビジネス以外のマイクロクレジットは点線で示してある。

検証項目の洗い出し

図の矢印に注目して網羅的に検証すべき項目を洗い出すと以下のようになる。それぞれ因果関係が成り立つかどうかを検証する事になる。

<所得>

1.クレジットアクセスの拡大→ビジネスの利益向上(所得の増加)

<健康>

2.可処分所得の増加→健康への支出増加

3.女性エンパワメント→健康への支出増加

4.健康への支出増加→健康の向上

<教育>

5.可処分所得の増加→教育への支出増加

6.女性エンパワメント→教育への支出増加

7.教育への支出増加→健康の向上

これを別の視点で言い換えて整理すると、「財→財・財→サービス」×「意志・能力」のマトリックスとなる。

「財→財×意志」は、マイクロクレジットで得たお金を使ってビジネスで利益を生もうとする(お金をお金にかえる)意志(マイクロクレジットに応募する時点で意志はある事が前提なので検証項目としてはなし)、「財→財×能力」はマイクロクレジットを利用して実際にビジネスで利益を生む事が出来る能力、「財→サービス×意志」は増えた可処分所得を健康や教育というケイパビリティ項目にかえる意志、「財→サービス×能力」は増えた可処分所得を使って健康や教育というケイパビリティ項目に実際に変換できる能力を表す。

以上より、以下、各検証項目について、先行研究を参考にしつつ、1つずつ検証していく。

One Reply to “「クレジットアクセス→ケイパビリティ向上」Pathwayの整理と検証項目の洗い出し<卒論・本論2-2>”

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です